「当たり前でしょ」

即答したのを、わずかに目を見張った志田。

鬼になるって言ったお兄が、そのままあたしを実家(うち)に連れ戻すくらいは想像がつく。隆二から引き離せば浮かされた熱から醒める、そんな風に思ってるのかもしれない。

胸の内でふっと天を仰いだ。

「せっかく家族(みんな)が祝ってくれるのに、行かないでどうするのよ」

強がりじゃない本心。

「お父さん達にも隆二のことをちゃんと話して、お兄に謝んなきゃ。真っ当な男に惚れなくてごめんなさいって」

妹の幸せを願うお兄の気持ちがどんな形でも受け止めて。解りあえなくても、心からの『ありがとう』を手渡して。

「それから帰るわ、隆二のところに。歩いてでもなんでも」

素直に言って素直に笑った。