今年の梅雨明けは少し早そうだった。それでも降ったり止んだりの雨続き、洗濯物の乾き具合が悩ましい。

夕方は運悪く退社時間あたりで雨が強まって。自分のマンションのエントランスに着いた時には肩から下がしっとり濡れてた。

まず洗濯とシャワーね。巡らせながらエレベーターに乗り、カードキーで玄関のドアを開ける。開けてそのまま踵を返しかけたのを、どうにか思い留まった。隅に揃えてあった黒革の靴。気配もなく立ってた黒スーツの男。

「お疲れ様でした、お嬢」

「あ・・・うん。ただいま」

面と向かってここで会うの、いつぶり?さり気なく返したものの、勝手に泳いだ目は合わせられてもない。

「風呂は沸いてます」

それだけ言い、あたしの手から通勤バッグを取り上げてリビングに消えた志田。愛想のない話し方も空気もいつも通り。・・・いつも通りすぎて、自分だけ気まずい感じだったのがなんだか口惜しい。

志田にやましいことは何もしてないんだし!

濡れた服を洗濯機に放り込み、鼻息荒くバスルームの扉に手をかけたあたしだった。