車は少しして、とあるマンションの地下駐車場に滑り込んだ。エレベーターに乗ると、並んだボタンの最大数字は『12』。隆二は『6』に指を伸ばした。

友達の紹介でハタチの頃に付き合った彼氏が一人暮らしだった。こういうシチュエーションも初めてじゃないのに、心臓が口から飛び出そう。脳ミソなんて熔けながら沸騰してる。いざフタを開けてみたらガッカリされるとか、想像しただけで立ち直れない。ムリ。死ぬ。

扉が開いて廊下を右に、二つ目くらいのドアに彼が鍵を差し込む仕草をぼんやり見てた。緊張のあまり古いとか新しいとか、どんなマンションかも記憶が白い。

先に靴を脱いで上がった隆二が振り返る。立ち尽くすあたしに。

「どうしたの?」

風呂敷包み片手にやんわり笑い。

「帰りたくなった?」

本心で首を横に振り、半分破れかぶれで思い切った。

「・・・悪いけどあたし、全っ然こういうの慣れてないからっ。初心者と変わんないし、文句も苦情も受け付けないしっ、気に入らなかったら返品するなり好きにして・・・!」