突き放した口調でも眼差しが和らいでた。何だかんだ“長兄”が板についてて思わずクスリ。

「仲良いですね」

「・・・ただのお守りですがね。手前ェの尻も拭えねぇガキ共の」

「これ以上オレの悪口聞かせる前に行こっか?」

敵わないとばかりに。

柳さんがあたしに手渡したお使い包みからは香ばしいお醤油の香りが。電話で頼んでたのはテイクアウト(これ)らしい。他にお客がいなかったらもっと話を訊きたかった。お兄がどんな世話を焼かせたのかとか、伊沢さんが知ってる柳さんはどんな男か、とか。

当たり障りのない挨拶をして立体駐車場に戻り、そのまま繁華街を抜けてく車。

「伊沢さんて鷺沢一家だったの?」

ほんのり温もる膝の上の包みに目を落としながら、そのくらいは訊いても平気だろう。

「二年前に脚やられちゃってね。現役は引退したけど、今は後援会の会長みたいなもんかなぁ。自分で組持ってもやってける人なんだよ、ほんとは」

信号のない路地を右にハンドルを切って柳さんが呟いた。