「マスター…俺やっぱガキだわ」

 鼻の奥がツンと来て思わず俯きグラスの中身を覗き込む。
 ほんの少し揺れるカクテルの水面が歪んでそこに映る俺の顔を歪ませた。

 きっとそうでなくても情けない顔してるだろうけど。

 向いに感じるマスターの気配は相変わらず穏やかだ。
 いつもと変わらない調子で「そりゃそうだよまだ二十歳のガキンチョでしょ」頭を乱暴にワシワシと撫でて慰めてくれた。

 大きな大人の手が心地よく同時に羨ましくも思う。


 ちびちびと飲んだカクテルの酔いにまどろみ、ぼんやりしているとざわついた店内の音が徐々に引いていき幾人の男女のカウントダウンに変わった。


「…五…四…三…二…一…」


 「ゼロ」のカウント同時にクラッカーの弾ける音が所かしこで響き渡る。
 クリスマスの終わりを告げる安っぽいファンファーレだ。


 そして…俺の恋の終わりを知らせる合図。