「…今日さ、凛ネェ…結婚したんだ」


 俺の知らない男と。


 人伝に聞いた話だと凛ネェより五つ年上の大手商社マン。
 全国どころか海外転勤もあるようなエリート職だそうだ。


 俺みたいな二十歳の暢気な大学生とは全然違う社会的にも認められた存在だ。

 人当たりも良く優しい人らしい。



 勿論、凛ネェから結婚するって話は直接聞いた。

 相手を紹介したいって言われたけど断った。

 だってどんなツラして会えばいいか分からないじゃないか。

 会って何話せばいいかなんてもっと分からない。


「凛ネェをお願いします」なんてカッコ良く言える自信もなかった。

 だから会わずに…結婚式にも出れずここに…いる。