「毎年誕生日祝ってくれてたんだけどさ、今年はもう…ね?」


 グラスに一口だけ口をつけ壁に掛ったアンティークの時計を指さす。

 時計の針は短針も長針も一番上を目指してる。
 十二月二十五日もあと一〇分ほどで終わりを告げる。


「年上だからって遠慮しちゃあ駄目だよ。男ならガツンと行かなきゃ」

「そうなんだけど…もう今更、って感じじゃん」


 ずっと今まで男として向き合わず弟として傍に居ることを望んだ自分の責任だ。

 その甘えが今という時を生んでいるのだから納得するしかない。

 そうするしかない、と思うけど。


「やっぱさ、あと七年…いや五年でも早く生まれたかったなーって思うよ」

「仮定は仮定だよ。だいたい中田君、自分から積極的にアプローチかけたいタイプでしょ?」

「そういうことないと思うだけどなぁ」


 今まで凛ネェ以外にも惹かれて付き合ったりしたこともある。
 その時は積極的にいってたと思うんだけど。