皺と節の目立つ壮年の男らしい手が丁寧に動きシェイカーを振る。

 ざわめく店内の中からリズミカルな音を聞き分け心地よく見守っているとあっという間に目の前にグラスが置かれた。

 そしてシェイカーから流し込まれた液体で空のグラスがカクテルへと変わる。


「ども」

「メリークリスマス…じゃなくハッピーバースデー」

「思えてくれてたんだ」

「そりゃあ常連さんの誕生日ぐらい覚えるよ」


 ケーキでも出そうか?と茶化すマスターをよして下さいよと愛想笑いで交わしチェダーチーズをオーダーした。

 イタリアからわざわざマスターが買い付けてくるこのチーズは絶品でいつもオーダーする逸品だ。


 マスターはチーズの乗った皿を俺の目の前に置きながら横目でちらりとカップル客を見て溜息を吐く。