「おまちどうさま」

 彼女はそう言ってトレイをソファ前のテーブルに下ろすと綺麗に切り分けたアップルパイを乗せた皿を俺の前に差し出す。


 焼きたての湯気に乗って甘い香りがふぁっと広がる。
 程よく黄金色に焼けたパイ生地は綺麗な断層を作り見ただけでもサクサクした触感を想像させた。


「ああ、やっぱり美味しそうだな」

「『美味しそう』じゃなく『美味しい』でしょ?」


 もう、と唇を尖らす彼女に思わず笑いが込み上げてくる。

 料理の得意な彼女は俺の好み通りの料理を作ってくれる。


「そうだった…いつも美味しい。じゃあ頂くよ」

「どうぞおあがり下さい」

 彼女の嬉しそうな笑顔をトッピングに俺はアップルパイに手を伸ばす。

 添えられたバニラアイスをすくいパイへ乗せると白い塊はゆるゆると形を崩して甘いソースへと形を変えた。