そうこうしている間に授業開始まで残り30秒ほどになっていた。


陸はサボるつもりだろうか?


そう思った時だった。


廊下から足音が近づいてきて、勢いよく化学室のドアが開かれた。


陸が教室に滑り込んできたのだ。


「あ、きた」


美紀がそう言った瞬間、陸が後ろ手にドアを閉めた。


勢いがついていたせいか、バンッと大きな音が鳴ってドアがしまる。


その拍子に陸が飛びあがっていた。


「いってぇ!!」


ドアを閉めた右手を押さえてうめき声を上げる。


その瞬間あたしと夢は目を見かわせた。


ここからじゃしっかり見えなかったけれど、今陸はドアに指を挟んだのだ。


「ちょっと陸なにしてんのよ」


ブッと吹きだして笑いながら美紀が言う。


「指挟んじまった」


「自分で閉めたドアで指挟むとか、どれだけマヌケよ!」


美紀は陸が相手でも容赦なく笑う。