そして化学室。


授業の準備を終えてあと1分ほどで授業が始まるというときだった。


美紀たちが重役出勤のようにやってきたかと思ったが、陸の姿がなかった。


あたしは目の端で美紀たちの様子をうかがう。


美紀たちは一番後ろの6人席を4人で使っている。


本当は化学室ではそれぞれ違う班なのだけれど、そんなことは無視して勝手にグループになっていた。


「陸遅くないか?」


そう言ったのは靖だった。


「なんか先輩呼ばれて行ったんだけど、戻ってこないね」


美紀は返事をしながら手鏡で自分の前髪を確認している。


自分の彼氏のことなのに、さして気にしている様子はない。


「先輩って、大丈夫なの?」


愛子が心配そうな顔をしている。


「文句つけられたとしても平気でしょ。陸は強いから」


その言葉通り、美紀は平然とした様子だ。


確かに、陸の筋肉を思い出すと心配はいらないかもしれない。