「あははっ! すぐ落ち込んじゃってかわいそー!」


愛子は甲高い笑い声を上げるから、耳が痛くなりそうだった。


愛子の声は一体どこから出てくるのだろうと、いつも感じさせるものだった。


そんな笑い声が伝染していくように、教室のあちこちから笑い声が聞こえてくる。


「こんなに笑われるくらいなら、一生笑わずに生きていった方がいいんじゃないの?」


そんなことを言いながらも、愛子は必死で美紀の様子をうかがっているのがわかった。


ここまでして美紀の腰ぎんちゃくになってなにが楽しいのだろう。


イジメられているのはあたしと夢に見えるかもしれないけれど、狭い世界で生きているのは愛子の方だ。


「愛子その辺にしてあげなよ。2人とも泣いちゃうでしょ」


美紀がそう言って愛子を止めたので、愛子がホッとするのが見てとれた。


美紀の機嫌を取るのも大変みたいだ。


「じゃ、また後でね2人とも」


美紀はそう言うと満足した表情で自分の席へと戻って行ったのだった。