そのことに気がついた夢が口角を上げる。


いつも大きな顔をしている陸の痛がる姿が見れるなんて、相当レアなはずだ。


今からワクワクしてきてしまう。


「なにニヤニヤしてんの? キモイんだけど」


あたしたちの気分をそぐようなことを言ってきたのは美紀だった。


いつの間に登校してきていたのか、腕組みをして近づいてくる。


その後ろからは愛子、それに鼻に絆創膏を張った靖が立っていた。


靖の間抜けな顔にまた笑ってしまいそうになり、必死で笑いを押し込めた。


「お前ら2人がニヤニヤしてるとキモイんだよ。なぁ愛子?」


美紀に言われて愛子がすぐに前に出た。


小柄で華奢で、風が吹いたら倒れてしまいそうだ。


しかし、胸を張って「ほんとキモイよねぇ!」と、声を上げる。


まるで、そうすることが自分の役目だと言いたげだ。


「キモイから、2人とももう永遠に笑わないでくれる?」


愛子の言葉にあたしと夢は同時にうつむいた。


でも、落ち込んでいるわけでも傷ついているわけでもない。


そう見せかけているのだ。


愛子はあたしたちの情けない姿を見れば満足なのだから。