食器を洗っているときも、さっきの柊木善の言葉が頭から離れなかった。
そんな私をよそに、夕方から彼はバイトに行ってしまった。
夜の10時過ぎにバイトから柊木善が帰宅。
相当疲れたのか、ソファに座る私の隣にどっしりと座った。
「疲れた……」
「おつかれさま……。なにか飲み物でも入れようか?」
「……凛李、優しいな」
りっ、凛李……⁉︎
突然の呼び捨て⁉︎
……この人はいったいなにを考えているの……?
基本的に瑠月は"瑠月ちゃん"と呼ばれ、私は"若菜さん"と呼ばれることが多い。
ましてや、男の子から下の名前を呼び捨てされたことなんてないから……現在の私の脳内は大パニックを起こしている。
「……飲み物、とってくる」
一度冷静になるためにこの場を離れようとした私。
しかし、柊木善の「飲み物いらない。その代わりにひざ貸して」という言葉で離れられなくなってしまった。