しかし、ここで断ったらただのいつもの私だ。
善に敵わない私のままだ。

たまにはーーギャフンと言わせてもいいんじゃないかな?
いいよね?



「決めた。耳貸して」



私は、覚悟を決めた。

善は自分の耳を私に傾けてきた。
私は善にちゃんと聞こえるように自分の口を両手で囲んでから……善の耳元で「好きだよ」とささやいた。

少し離れると、善が横顔でもニヤッとしているのがわかった。
整った顔立ちだなぁ……と改めて思う。
だけど、見とれている時間はない。

私はすかさず、善の腕をギュッとつかみ……その勢いに任せて善の頬にキスをした。
突然のできごとにおどろいた様子の善は、目を丸くして私のことをまじまじと見る。

……私は、そんな善の両頬を手でそっと触り、自分のほうへと引き寄せながら善の唇に自分の唇を重ねた……。