本当だったら最初から善が守ってくれて、私の代わりに秦くんに言い返すこともできた。
でも、そうしてしまったら秦くんはまた私を説得しに来ていたかもしれないし、私の中でもモヤモヤが残っていたかもしれない。

そうならないために、私の中で整理ができるように……善は私が自分の言葉で秦くんに話せるようにしてくれた。

おかげですごくスッキリした。
小学生のときのトラウマも、遠くへ飛んでいった気がする……。



「おーい、そこいい感じなのはわかるけどそろそろ移動するぞー」



生活指導の先生がポケットに両手を入れたまま近づいてきた。

そうだよ、ここ学校だった……。
しかも、学年集会が終わったところで他の生徒も先生たちもいるじゃない……。

私は今さら恥ずかしくなり、善から離れて歩こうとすると……あっけなく善に腕をつかまれる。
そのまま手を握られ、善のほうへ引き寄せられた。

相変わらず女の子たちからの視線が痛いーーはずが、なぜかちがう感じがする。
視線は感じるものの、女の子たちは口をすぼめてなんとも言えない顔で私と善のことを見ていた。