言葉につまらず言いたいことをすべて言えた。
だけど体は正直で、手の震えが途中から収まらず、両手をギュッとにぎりながら話していた。

怖くて秦くんの顔が見れない。
なにを言われるんだろう。
どんな暴言を浴びせられるんだろう。
……そんなことばかりが頭に浮かぶ。



「あんな、顔しか取り柄のないようなやつを選ぶってことなんだ。それが若菜の気持ちなんだな」

「……はい」

「まぁ、俺だっておまえみたいな地味なーー」



秦くんがそう言いかけたところで、それ以上なにも聞こえなくなった。
……なぜなら、誰かに両耳をふさがれたから。

その人物を見上げると……そこには、善がいた。

私の救世主。
平然としていてなににも興味がなさそうな人。
でも、私が助けてほしいときは必ずそばにいてくれる人。

善の顔を見た瞬間ーー涙があふれだした。
善は私の耳から手を離し、今度は優しく制服の袖で私の涙をぬぐう。



「もう俺の大切な人を傷つけないでくれないかな」



私のために秦くんの声が聞こえないように耳をふさいでくれたんだ。
そうわかって、こんなときなのにときめいてしまう。