「俺といたほうが楽しいってわかってくれたんだよね?」

「……」

「若菜は真面目で自分の気持ちを素直に言えない性格だから柊木に申し訳なくて別れを切り出せないんだろ? さっきも柊木に触られていやな気持ちになってたんだよな?」

「……どうしてそうなるの」



私の話も聞かず、理解もしようとせず話し続ける秦くん。
呼吸がしづらくなってきた。
落ちつけ、落ちつけ自分。

善の顔を思い出して、息を深く吸う。

……すると、後ろのほうに並んでいる女の子たちが私たちを指差して笑っているのが視界に入った。



「柊木くんより、断然あの人のほうがお似合いじゃない?」

「言えてる! 真面目同士くっつけばいいのにね」

「告白されてるんじゃないの? そのまま乗りかえちゃえ〜」



あぁ……どうしてこういう聞きたくない声に限って鮮明に耳に入り込んでくるんだろう。
聞きたくない声は遮断できるような機能が備えつけられたらいいのにーー。