「結果的に瑠月たちの家で暮らすことになったけど、善は本当は一人暮らしするつもりだったんだよ」

「……」

「何回頼んでも善の親は許してくれなくて、瑠月たちと住むことになったらしい」

「そうだったんだ……」

「善の親は昔から過保護でさ、善はそんな親から早く自立したいってずっと言ってた」

「そのためにお金を貯めてるんだ……」



なにも考えてなさそうに見えて、実はちゃんと考えているんだ。

自分のこと、将来のこと、私なんかよりも真剣に考えてる。

いつまでも親に甘えている自分が恥ずかしいと思った。


少しだけ……柊木善の見る目が変わったかもしれない。



ちゃんと知りもしないのに勝手な先入観で彼のことを悪く思ってしまった。

それは本当に申し訳なく思う。



次の日の選択授業への移動中ーーー屋上へと続く階段の上のほうからなにやら声が聞こえた。

普段なら気にせずに通り過ぎるのに、このときに限って私はのぞいてしまった。