「あの、やっぱりわたし、」
「今さら、やらないなんて言わないよな?」
「……‼︎」

小さな声で「やります」とつぶやいたら、「当たり前だろ」と返された。
や、やっぱり極悪人⁉︎

「……岸くんの成績は学年トップだからねー、岸くんに教わったら、陽菜子ちゃんの成績もあがっちゃうね!」

すると、それまで横で黙っていた川西先輩が口を挟んできた。
……学年トップ。
そんなに頭がいい人だったなんて、知らなかった!


「あ、岸くん、そろそろ面接対策の時間じゃない?」
「ん……そうだな。おい、さっそくだけどこの書類、頼めるか」
「……えっ、あ、私ですか? えっと……」

「これ全部、俺っぽく署名しといて」

そう言って、バン、と会長が机の上に置いたのは、大量の紙の束。

「は、これ、全部ですか⁉︎ しかも会長っぽくって……」

「それ、見て真似ろ。後は川西、頼んだ」

「はーい」
「えっ、ちょっと、会長⁉︎」

岸会長は机の上の記入済みのプリントを指差すと、その場を去ろうとしたけど、「あ」って言って私の隣に戻ってきて。

そして、わたしの耳元で、
「勉強会は次からな。覚悟しとけよ」

って、とってもいい声で呟いた。

わざとなのか無意識なのか、息が耳にかかってドキッとする。
なんだかいろいろ、身が持たない気がした。