「頭も良くて、スポーツもできて、異性にも人気で。そんな岸会長に、わたしの気持ちがわかるわけーー……」

「もういい、わかった」

わたしの言葉を止めた岸会長は、……ひどく冷たい目でわたしを見下ろしていて。
そして、その無表情のまま、

「そんなに嫌なら、無理に選挙に出ることない。誰も、強制しない」

って低い声で言った。

……はじめて岸会長に会ったときに“怖い”って思ったことを思い出す。

あのときも、興味ないものを見るような目で、わたしをにらんでいた。

「あ……あの、」

「それじゃ、俺の雑用係の契約も、終わりにしたほうがいいな。ちょうどもうすぐ任期も終わる。今までこき使って悪かった」

生徒会に入らないなら、雑用係をやる資格はない。遠回しにそう言われているように感じる。
(そうしたら……わたしの「家庭教師」も、終わりってこと……?)

自分からひどいことを言ったくせに、突き放されるのは嫌で。
わたし、いつからこんなワガママな人間になってしまったんだろう。

そしてわたしは、最低なことを口走る。

「結局、同好会のことなんか考えてくれてなかったんだ……」

その言葉に、岸会長の片眉がピクリと上がる。


「……お前、どこまで人に頼るつもりだ」
「‼︎」

冷たい視線、乾いた笑い。
背中を、嫌な汗が流れていったのがわかる。