驚いて目を見開いたわたしをよそに、会長は言葉を続ける。

「去年の選挙のとき、俺が使った原稿があるんだ。それをちょっとアレンジして、少し練習すればいけるだろ」

「ちょっ、ちょっと待ってください、会長っ」

「ん?」

会長は当たり前みたいにわたしの選挙プランを考えてくれていた。

他の先輩たちがみんな、「わたしがひかりちゃんに勝てるはずない」って思っているのに、会長は……。

「わたしが選挙に出て、勝てると思うんですか?」

素直な疑問をぶつけると、

「……さぁ、どうだろうな」

って返された。

あいまいな返事に、肩を落としそうになるけど、会長は続けて、

「でも、やる前から勝手に諦めて、どうすんだよ」

すごく真っ直ぐな意見をくれたから、もう一度、考えてみる。

……そして、ここ数日考えていた、ある「お願い」を口にした。
選挙でひかりちゃんと戦うなら、わたしが勝てる方法はひとつ……。


「岸会長、わたしの推薦人、やってくれませんか」


わたし自身が、ひかりちゃんより優れている点はきっとない。

だから、わたしの横に岸会長に立ってもらって、「生徒会長の推薦」という形で自分の価値をあげる。本気で勝ちに行くなら、それしか方法はないって思った。


……それに、会長なら、わたしの味方をしてくれるはず。
もしかしたら会長もそのつもりでいたからかもしれない、と返事を待つと。


「……悪い。俺は、できない」

少し目をそらしながら、小さな声で会長はそう答えた。