「そんな訳で、ケイン様に認めて貰う為にも勉強や、淑女教育を頑張ってます!」
「そうなの……」
「そのおかげで後日、アルス様にも認めて貰えたので一石二鳥ですっ」
「認めるって……殿下の婚約者として? それとも、光属性の持ち主として?」
猪はともかく、暴風雨の名前が出たのに私は不思議に思って尋ねた。
他の面々とは違って、暴風雨は平民なのでエマの出自に抵抗はない筈だ。そしてイザベルと違い、エマは教会に属している訳ではない。だから反発があるとしたら、二人に共通している光属性くらいしか思いつかなかった。
けれど返されたのは、思いがけない言葉だった。
「いえ! イザベル教の信者としてです!」
「……え、何て?」
「ですから、イザベル教の」
「あの、聞こえなかった訳じゃなくてね?」
「そうですか? あのですね……」
聞こえてはいたのだが、脳が意味を処理するのを拒否してしまった。
そんな私を他所に、エマは暴風雨とのやり取りを話してくれた。
※
それは、週一の勉強会が、何度か行われた後のことだった。
「……君のことを、誤解していたようだ」
「えっ?」
わたしがノートや筆記具を鞄に入れていると、アルス様が声をかけてきた。
他の面々がいるとアルス様は基本、敬語だ。だけど今は二人きりなので、素の話し方をしている。
(誤解だから、悪く思われてたのが違ったってことよね?)
しかし、悪く思われることが――色々あって、どれなのか思いつかない。だから、ここはアルス様の話を聞くことにした。
そんなわたしの前で、アルス様が話の先を続ける。
「聖女様の家に入り込み、追い出したと聞いていた……だから、いくら見た目が愛らしい子供でも、油断ならないと思っていた」
「……申し訳ないです!」
「いや……こちらこそ、申し訳ない。賢しいが、悪意や害意はなさそうだ」
エマが自主的にやった訳ではないが、確かに事実で悪である。だから土下座は何とか堪えたが、わたしは深々と頭を下げた。
そんなわたしに、アルス様が真面目に酷いことを言う。
下心がバレていたのに内心、頭を抱えていると――アルス様が、優しい声で話の先を続けた。
「……無力な子供だからこそ、自分の役割や居場所にしがみつくのは当然だ。それに何より、聖女様を想う気持ちは本物だと感じた」
「はいっ! お姉さまのことは、誰よりもお……尊敬していますっ」
推しと言うのだけはかろうじて堪えたが、イザベルに対しての気持ちが認められたことが嬉しくて、パッと顔を上げて力説した。
そんなわたしに微かな、けれど確かな笑みが向けられる。
ゲームのスチルで見たような、神々しくも麗しい微笑みを見ながら、私はしみじみと思った。
(……良かった。アルス様が、同担拒否じゃなくて)
「そうなの……」
「そのおかげで後日、アルス様にも認めて貰えたので一石二鳥ですっ」
「認めるって……殿下の婚約者として? それとも、光属性の持ち主として?」
猪はともかく、暴風雨の名前が出たのに私は不思議に思って尋ねた。
他の面々とは違って、暴風雨は平民なのでエマの出自に抵抗はない筈だ。そしてイザベルと違い、エマは教会に属している訳ではない。だから反発があるとしたら、二人に共通している光属性くらいしか思いつかなかった。
けれど返されたのは、思いがけない言葉だった。
「いえ! イザベル教の信者としてです!」
「……え、何て?」
「ですから、イザベル教の」
「あの、聞こえなかった訳じゃなくてね?」
「そうですか? あのですね……」
聞こえてはいたのだが、脳が意味を処理するのを拒否してしまった。
そんな私を他所に、エマは暴風雨とのやり取りを話してくれた。
※
それは、週一の勉強会が、何度か行われた後のことだった。
「……君のことを、誤解していたようだ」
「えっ?」
わたしがノートや筆記具を鞄に入れていると、アルス様が声をかけてきた。
他の面々がいるとアルス様は基本、敬語だ。だけど今は二人きりなので、素の話し方をしている。
(誤解だから、悪く思われてたのが違ったってことよね?)
しかし、悪く思われることが――色々あって、どれなのか思いつかない。だから、ここはアルス様の話を聞くことにした。
そんなわたしの前で、アルス様が話の先を続ける。
「聖女様の家に入り込み、追い出したと聞いていた……だから、いくら見た目が愛らしい子供でも、油断ならないと思っていた」
「……申し訳ないです!」
「いや……こちらこそ、申し訳ない。賢しいが、悪意や害意はなさそうだ」
エマが自主的にやった訳ではないが、確かに事実で悪である。だから土下座は何とか堪えたが、わたしは深々と頭を下げた。
そんなわたしに、アルス様が真面目に酷いことを言う。
下心がバレていたのに内心、頭を抱えていると――アルス様が、優しい声で話の先を続けた。
「……無力な子供だからこそ、自分の役割や居場所にしがみつくのは当然だ。それに何より、聖女様を想う気持ちは本物だと感じた」
「はいっ! お姉さまのことは、誰よりもお……尊敬していますっ」
推しと言うのだけはかろうじて堪えたが、イザベルに対しての気持ちが認められたことが嬉しくて、パッと顔を上げて力説した。
そんなわたしに微かな、けれど確かな笑みが向けられる。
ゲームのスチルで見たような、神々しくも麗しい微笑みを見ながら、私はしみじみと思った。
(……良かった。アルス様が、同担拒否じゃなくて)