なんとも面倒臭そうな返事。
こんな黒澤先生と二人きりなんて、落ち着かないよ。
「あーくそ、シャツが落ちてくる」
まくっていたシャツがずり落ちてきてしまうようで、歯でシャツを引っ張りあげる黒澤先生。
うわー、なんて豪快。
って、感心してる場合じゃない。
「ダメだ。なんか止めるもんねーの?」
それでもやっぱり落ちちゃうみたいで、イラついたような声が飛んできた。
「えっと」
止めるもの止めるもの……。
きょろきょろして探すけど、クリップ……は違うよね。輪っかになってるものがいいんだけど、そんな都合のいいものは見つからない。
「あ……」
そうだ。
私は束ねている左右の髪をほどいた。
ゴムを腕に通して、シャツを止めておけばいいと思ったんだ。普段なんの役にも立たない私の、我ながらいい考え。