えええぇぇぇ!?
それは一瞬のできごとだった。
新城くんは彼の上に馬乗りになって、胸倉を引き上げる。
ひぃぃぃぃ!
新城くん、めちゃめちゃ強いじゃないの……!
そして、新城くんがいよいよ殴りかかろうとした瞬間、私はぎゅっと目をつぶった。
やっぱり、殴るのを見るのは怖いっ。
「やめとけ」
上から声が降ってきた。
よく聞きなれたその声に目を開ければ。
振り上げた新城くんの手を掴んでいるのは、嶺亜だった。
「乃愛がビビってる」
殴る寸前の腕を上げたままの態勢で、薄茶色の瞳と目があった。
私はその目を見つめたままゴクリと唾をのんだ。
新藤くんがゆっくり手を下ろす。
ほっ……。