「ナナはお前にたぶらかされたっつってんだよ!」


「はあっ!? あの尻軽女の方から言い寄って来たんだよ!」


「てめっ、人の女をっ……!」


うわぁ~。女の子がらみの揉めごとか。


顔と顔がくっつきそうなくらいの距離で、罵倒しあう二人。


目があったら、因縁をつけられるかもしれない。


ここはそーっと通ろう。


そう思ったタイミングが悪かった。


私が二人の横を通過した瞬間、オールバック男子が金髪男子を殴ったのだ。


──え?


吹っ飛んできた金髪男子の手が、私のほっぺたに当たり。


「いたっ」


思わず声を上げてしまった。