嶺亜と双子にしては随分地味だと、ある意味噂になっていたからすぐにピンときた。
クラスの女子たちも「嶺亜くんの妹なら仲良くしたいけど、ちょっとアタシたちとはタイプがちがうよね」なんて言っていた。
見た目はともかく、心地いいその音色に俺は惚れてしまい、結局最後まで聞いていた。
弾き終わったあと、彼女はピアノの上に乗っていたクリーナーで丁寧に鍵盤を拭き、音が出ないようにそっと蓋をしめる。
そして、椅子をきちんと中へ戻す。
誰が見ているわけでもないのに、丁寧なその所作に心が奪われた。
どんな子なんだろう。
話してみたいと思ったが、クラスも違う俺にきっかけなんてなかった。
嶺亜に頼めば接点なんてすぐ持てただろうが、仲が良いからこそハズくて言えなかったんだ。