お父さんと嶺亜以外の男の人に名前呼びされたことなんて今まで一度もないから、軽くパニックになる。
そもそも存在感のない私は、男子に名字すら呼ばれることもないんだけれど。
「ねえ、どっち?」
パックを差し出して、ニコッと見せるそのスマイルの破壊力といったら……。
イケメンは嶺亜で見慣れているつもりだったけど、兄弟かそうじゃないかってすごい差なんだと思い知る。
「じゃ、じゃあ鮭で……」
いただきますと言って、鮭のおにぎりをひとつもらった。
「俺は、これもらっていい?」
新城くんが指さしたのは、ベーコンレタスサンド。
私は「どうぞ」とランチボックスを差し出した。