「乃愛、出来るだけ腕で前を隠して身を丸めて」


歩きながらそんな指示を出してくる凪くん。


誰も私のことなんて見てないのに……と思ったけど、凪くんが厳しいから私は出来るだけ身を丸めて早歩きする。


凪くんの家は、外観のきれいなマンションだった。


エレベーターに乗ると、6階のボタンを押す凪くん。


ガシャン、とエレベーターの扉が閉まった瞬間、緊張に包まれた。ふたりきりっていうことが急にリアルになってドキドキしちゃったんだ。


だって一応……か、か、彼氏の家に行くんだし。


エレベーターのボタンの前に立つ凪くんを背中側から眺める。


シャツから透ける肌。濡れた毛先からポタリと落ちる雫。


どれも同級生とは思えない色気を放っていて、改めてすごい人が彼氏なんだって実感した。


これは、恨まれるよね……。