あのあと凪くんは自分の家に戻り、すぐに夏休みに入った。
高校2年生の夏休みはあっという間に過ぎ去り、もう9月も半分が過ぎたところ。
「凪くん、あれから全然遊びに来てくれないわねえ」
ダイニングテーブルで、さやえんどうの筋取りをしながらお母さんがぽつりとこぼす。
なんの前触れもなく凪くんの名前を出すから、私はびくっと肩をあげてしまった。
「そ、そうだね……」
だって、私の彼氏だし。
突然名前が出てきたらびっくりするよ……。
凪くんが彼氏なんて今でも信じられない。
朝起きたら全部夢だったらどうしようって思うこともいまだにあるんだ。
私と凪くんがつき合ってることは、すぐに学校中に知れ渡ってしまった。