「入学したてのころ、放課後音楽室で乃愛がピアノを弾いてるのを聞いたんだ」
「えっ、あれ聞いてたの?」
「ああ。初めは音に聞き惚れてのぞいたら、仕草に惚れて。そのあと乃愛の素顔に惚れて、性格に惚れた」
乃愛は、大きい瞳をさらに大きくして俺を見つめる。
「だから、俺は乃愛の全部が大好きってこと」
「……っ」
やっぱり目を見てちゃんと伝えられて良かった。
その方が、気持ちも伝わるはずだから。
「わ、私も凪くんが……き……」
「なに? 聞こえない」
ちょっとイジワルだったか?
真っ赤な顔を俺に向けて、手を胸の前で組み呼吸を整える姿がたまらない。
大きく息を吸い込んで、乃愛は言い直した。
「凪くんが、好きですっ……」