言ったな。それはもちろん乃愛のことだ。


「だ、だから……」


ぐすんっ……乃愛はすこし項垂れて鼻をすすった。


それで"頑張る"ってことは、つまり。


ドクンドクン。


鼓動が激しくなっていく。


もう、言ってもいいか? 言うなら今か? この間伝えそびれた俺の気持ち。


そうと決めたら迷わず言った。


「それ、乃愛のことだよ?」


「え……?」


涙でぬれた瞳が、俺をまっすぐ見つめた。


「好きな子っていうのは、乃愛」


もう一度言うと、乃愛はきょとんとした顔で俺を見つめた。


「う、うそ……」


「うそじゃない。俺が好きなのは乃愛」


「どうして……私?」


首をこてんと傾けたその仕草が無防備すぎてやばい。


本当に気づいてなかったんだな。


結構アピールしてたつもりなんだけど。