乃愛は顔の前で大きく手を振るが、聞いてしまったものは消せない。むしろ、興味深すぎる内容だ。


「ねえ、頑張る前に家に戻るってどういうこと?」


もしかしたら……と、期待してしまう。


「言わないと──」


「……っ!」


まだその先を言ってもないのに、乃愛は両手で口をふさいだ。


……乃愛のくせに学習能力があるな。


そんなに俺にキスされるのが嫌か?


乃愛は真っ赤な顔をしながら、堪忍したように口を開いた。


「前に、凪くんが告白されてるのを聞いちゃったの」


え?


「お昼休みに、一緒にご飯を食べた日……」


「ああ……あれか」


まじか。まさか乃愛に聞かれてたなんて。


「その時に凪くん、好きな子がいるって言ってたでしょ?」


少し不安げな上目づかいで俺を見る。