ダメだ。今日はちゃんと話をするって決めたんだから。
暴走しかけた理性を奥に引っ込める。
「はあ……」
無意識なのか、乃愛が深いため息をついた。パジャマのショーパンから伸びる膝の上に両手をそろえて。
え……そんなに俺といるのが退屈なのか?
だとしたらマジへこむんだけど。
様子をうかがうようにじっと見ていると、小さく口を開けてぼそぼそつぶやく。
「これから頑張ろうって思ってた矢先に、家に戻っちゃうなんて……」
……頑張る?
なにを頑張るんだ?
「乃愛、それどういう意味?」
たまらず問いかけると「へ……?」と少し間の抜けたような顔をして。
「や、やだっ……」
慌てて口をおさえる乃愛。
「もしかして声に出てたっ!?」
俺は黙ってうなずく。
「わわわ忘れてっ……!」