平田さんがそう聞くと、河村さんは手を止めずに顔だけを彼女の方に向ける。


「凪くん熱があったから早退することになったの」


熱!?


「じゃあ、これ持っていくから次の授業に間に合わなかったら先生に伝えといてくれる?」


平田さんにそうお願いすると、すぐに教室を出ていった。


私は手をぎゅっと握りしめる。


……さっそく負けちゃった。


私のほうが凪くんの近くにいると思っていたのに、やっぱり河村さんには敵わないのかな……。



お昼休み。


今からお弁当を食べるというところで、


「萌花ちゃんごめん、私帰る!」


「えっ?」


包みを開いていた萌花ちゃんは、びっくりしたように私を見る。