その頃から、乃愛の様子がちょっと変になった。


俺を見る目が不安そうだったり、真帆がくれたクッキーをあからさまに気にしたり。


もしかして妬いてくれてるのかと思い、これは脈アリなんじゃないかと喜んだ俺はただのガキだった。


手の中にいたはずの乃愛が離れていくのを肌で感じたからだ。


決定的だったのは、あの日。


昼休みの音楽室で、ふたりでいたところをまさか見られるなんて。


『誰にも聞かれたくない話があるの』


そう真剣な顔で言った真帆に、断ることが出来なかったんだ。


母親が再婚したって言うし、また家でも大変なことがあるのかもしれない。


そこは俺には分からない領域だが、"同志"という気持ちがあった。