『凪くんありがとう』


俺にそう言ってきた真帆は、小学校のときのように自信たっぷりの真帆ではなかった。


『私、転校するの。だからもういいよ』


母親へも色んな風当たりがあったのだろう。もうこの街にはいられないと、引っ越すことになったらしい。


『私のこと忘れないでね』


『ああ』


『また会えるかな。その時は変わらず仲良くしてね』


そう言って中学1年の冬、真帆は転校していった。


そのあとから俺が女を振るたびに『真帆ちゃんのことがまだ好きなんだね』と言われるようになった。


真帆に恋愛感情なんて一切ない。


ただ女とつき合うのか面倒だったから、俺もその噂をありがたく利用していた。


「どうして?」って、しつこく迫られることがなく「やっぱりそうなんだ」って、あっさり引き下がってくれることが多かったからだ。