真帆もまんざらではなさそうで、『凪くんが将来お医者さんになるなら彼氏にしてあげてもいいけど』なんて、マセたことを言ってきて、なんだよと思ったが。
あの場面を見ていた俺は、なんとなく真帆に強いことが言えなかった。
それは、俺の家も似たようなことがあったからだと思う。
俺が小さいころに両親が離婚した原因は詳しく知らないが、姉貴が『お母さん再婚しないの?』と言った時に『男なんてこりごり』と言ったのを覚えていて、父親の女関係で別れたんだとなんとなく察していた。
真帆はなにも変わりない。
俺の考えすぎだったのかと思っていたが、中学に入ったころに真帆の父親がもうずっと家に帰っていないなんて噂が出た。
噂好きな大人たちがいろんなところで言っていたんだろう。父親が有名だった分、俺たちの耳にも入って来たんだ。