言いながら、俺は藤森に近づいていく。
逆に後ずさりをして、俺から離れようとする藤森。
追い詰められた彼女は、壁に背をついた。
「そ、そんなことは……」
ライオンににらまれた小動物のように、おどおどする。
そんな姿に興奮している俺はおかしいかもしれない。
「ないって言いきれる?」
──ダンッ。
俺は、壁に手をついて藤森を見下ろした。
俺たちにほとんど距離はない。
こんなところを誰かに見られたら、絶対に誤解されるような格好だ。
「あ、あ、あの……」
藤森はうつむきながら、困惑気味な声を出す。
いつもそうだ。
顔を見ると、すぐに目をそらしてうつむいて。