***

「いただきます」


夕飯の時間。


私は正面に座る凪くんの顔をよく見れない。


他の男の子はまだちょっと無理だけど、凪くんとなら正面から目を合わせるのも大丈夫になってきてたのに。


「うまーい!」


「静かに食えよ」


嶺亜がタレントさんの真似をして、それに凪くんが突っ込む。


こんなのいつものことで、私はそれを見て笑うのがパターンなのに。


今日は、頬の筋肉がぎこちなく上がるだけ。


そんな様子をちらっと凪くんに見られて、私はお茶碗で顔を隠すようにしてご飯を
食べた。


学校でのことが頭から離れない。


凪くんは、河村さんのことが好きなの──?


でもそんなこと、絶対に聞けないよ……。