ムシャクシャした気分で教室に入ると、藤森がひとりでせっせと机を水拭きしていた。
これは日直の仕事のひとつ。放課後にやらなきゃいけないってことで、一番面倒くさいやつだ。
部活に行くのも遅れるし、俺も含めて、だいたいの奴が適当にやってると思う。
濡れぞうきんを、ささっと軽くひと撫でさせて終わりだ。
けれど藤森は……ひとつひとつの机をしっかり磨きあげ、淵の所まで丁寧に拭いていた。
──ドクンッ。
そんな健気な姿に、昨日湯上りの藤森を見た時のような、胸の鼓動が沸き上がった。
気づいたら足が動いていた。
教室の前にかかっていた雑巾を水道で濡らしてきて、藤森がまだ拭いてない机を拭き始める。
「えっ?」
ここで俺のことに気づいたのか、藤森が声を上げた。
「あのっ、どうして……?」
「ん?」
「新城くん、日直じゃないよね……?」
驚いたように目をパチパチさせる藤森。