「凪くんごめん、電話なんだった?」


手を拭きながら、俺の元へパタパタ走り寄ってくる乃愛。


「間違い電話だった」


「そうなの?」


少し腑に落ちなさそうな顔をしたが、とくに疑うこともなく「ありがとう」と言っ
て、またキッチンへ戻っていく。


悪いとは思ったが、もし乃愛が芸能人になったら俺が困る。


俺だけの乃愛でいてくれればいいんだから。