「えっ。まじ?」
人んちの電話に出るって緊張するよな……。とりあえず取り次げばいいか。
俺は「んんっ」と軽く咳払いしてから受話器を取った。
「はい、もしもし」
『あ、こんにちはー。藤森さんのお宅ですか?』
電話越しとは思えないボリュームとテンションに、思わず耳から受話器を遠ざける。
誰だ? セールスか?
警戒しながら聞きかえす。
「……どちら様ですか?」
『わたくし、先日乃愛さんにご来店いただいた美容院の、高橋と言います」
美容院から何の電話だ……?
『乃愛さんはご在宅ですかー?』
なんだこの軽い男は。……ロクなやつじゃないな。変わったら面倒くさそうなこと
になりそうだ。