隣が藤森の部屋だったらしいが、ドライヤ―の音が聞こえてきた以外は、物音ひとつしなかった。
「いーなー、俺も泊まりに行きたかったなー」
実は、あのあとは藤森のことが頭から離れなくて、試合どころじゃなかった。
濡れた髪を下ろし、メガネを外した藤森はやけに色っぽくて。
おまけに湯上りだ。ほのかに薔薇の香りがして、思い出すだけで頭がくらくらしてくる。
いま教室にいる藤森とは似ても似つかない。
頭が混乱する……。
「おーい、聞いてんのー?」
「へ? ああ、わりぃ……」
「今日の凪、ノリわりぃな~」
祐樹はそう吐き捨てると、ポンと肩をたたいてどこかへ行った。