ど、泥棒……っ!?
私は肩から下げたバスタオルを胸元でぎゅっと抱きしめた。
ばっくんばっくん。
ゆったり落ち着いたはずの心臓が、激しく暴れだす。
いつもかけているメガネは、パジャマのポケットに入れたまんま。
目が悪すぎてハッキリ見えないけれど、そのフォルムはお父さんでもお兄ちゃんでもない。
今は夜の8時すぎ。
もう家族全員帰っているから鍵もしっかりしまっているはずなのに、どっから入ってきたの!?
しかも、こんなに堂々と家の廊下を歩いているなんて信じられない。
「そっちこそ、誰?」
泥棒さんの怪訝そうな声が聞こえた。
「ひっ……」
こんなに堂々と相手を確認する泥棒なんている!?
こ、こわいっ。
でも抵抗しなければ、襲われたりしないよね?
ここは相手を刺激せずに逃げた方がよさそう。
「し、失礼しますっ!」
私はゆっくり足を進めその人をすり抜けて、階段をダダダッと上がった。