「こわいんだけど」
「ぎゃーーーーーっ!」
いきなり背後から声がして、叫んでしまった。
だ、だって!
完全に自分の世界に浸ってたから、めちゃくちゃびっくりしちゃったんだもん。
「な、なんだよっ……」
そんな私に驚き返しているのは。
「なんだ、嶺亜か……」
ていうか、嶺亜しかいないよね。
「なんだとはなんだよ……」
嶺亜は怪訝そうに首をかしげたあと、ニヤリと笑う。
「鏡の前でひとりで笑ってなにしてたの」
うっ、やっぱり見られてたか。
こういうの、家族に見られるほど気まずいものはないよね。
「もしかして好きなやつでもできた?」
す、するどい!!
「あ、あの……」
「うん、何?」
たぶん嶺亜に相談したら、男心は雑誌なんか読まなくても完璧にわかると思う。
だけど、やっぱ恥ずかしいっ……。
「やっぱなんでもないっ……」
嶺亜を押しのけるように洗面所を飛び出すと、二階へ上がり自分の部屋に駆け込んだ。