でも俺はあったんだ。
乃愛がメガネを外して目を抑えた瞬間。
俺は自分の気持ちを抑えらんなくなったんだ。それでも、配慮したつもりだ。
それが、ハチマキで目を隠したということ。
余計に興奮した……てのは言わないでおこう。
「俺だって、萌花にいくらキスしたくてもつき合うまで我慢したわ」
はあ……とあきれたような溜息をついたあと、真面目な顔して聞いてきた。
「乃愛はなんて言ってたんだよ」
兄貴がいるって面倒だな。
しかも、そいつが親友だなんて。
「いや、べつになにも……」
「はあ? なんだそれ」
「もしかして、キスしたことに気づいてないかもしんねえ」
そう思ったら、ほっとするような、残念なような。
きっと、ハチマキの下では目を真ん丸にしてたにちがいない。