「うんっ! すごかったね。あっという間に抜かしちゃって嶺亜に追いついたときはびっくりしちゃった」
「よかった、乃愛が見ててくれて。またぼーっとしてて見逃されてたらどうしようかと思った」
「ちょ、なにそれっ……」
まあ、私のことだからあり得るよね。
うん。そう思われるのはしょうがない気がする。
半分納得しかけた私に、凪くんが笑ながら手を横にふる。
「うそうそ、ちゃんと乃愛の応援の声届いてたし」
「ええっ、ほんと?」
さすがにそれは嘘だよね、って思う。
だって大歓声だったし。私は最前列に行けずに後ろのほうから応援していたし。
だけど、凪くんはさらりと言ってのけた。
「乃愛の声だけは、特別だからね」
どくんっ──。
"トクベツ"
その言葉が繰り返し私の中にこだまする。