黒澤が差し出したのは、黒いゴムふたつ。
なんだそれ……と思った直後ピンときた。乃愛がいつも髪を結んでいるゴムだ。
「あっ!」
小さく声を上げた乃愛は、途端に顔を真っ赤にさせた。
そして「すみませんっ、ありがとうございます」と言って受け取る。
どうして乃愛の髪ゴムを黒澤が……?
どこに忘れるって言うんだ。
待てよ。乃愛は黒澤の前で髪をほどいたのか?
それってどういう状況だよ!!!
頭の中は一気にパニック。
顔が赤くなる状況……。俺が乃愛に迫るとき、いつもそんな顔になっているけれど。
まさか。
ハッとして黒澤を見ると、俺に向かって勝ち誇ったようにニヤリと口角をあげた。