「バイバーイ」「じゃあなー」


ヒラヒラと手を振って駅の中に消えていくみんなを見送る。

10時ちょうどにお店を出れば、あたりは真っ暗だった。

頭上には三日月がはっきりくっきりと顔を出している。


「じゃあ…帰ろっか」

「うん…」


遥斗くんと並んで歩き出す。

「一緒に帰ろ」と耳打ちされて、ドキンとしたのはついさっきのこと。

同じマンションだから自然かもしれないけど、緊張しちゃう。

風が頬に当たっても、ちっとも涼しくならない。

むしろ熱くなる一方で、心臓はドキドキ言っている。



「そういえば、D組との試合…惜しかったね」

「…」


遥斗くんを見上げる。

夏生くんの言葉が引っかかってるから、さりげなくD組というワードを出してみた。

少しの間を置いて、特に表情を変えることなく遥斗くんは私を見た。



「……うん。水瀬くんかっこよかったね」

「遥斗くんの方がかっこよかったよ」

「え…?」

「…あ、」


やってしまった。

本音がポロッと…じゃなくて、ガッツリと口からこぼれてしまった。